イスラム暦1433年ゼルハッジャ月5日
最高指導者のメッカ巡礼者に寄せたメッセージ 慈悲深く、慈愛あまねき、神の御名において 世界の創造主である神に感謝する。確かで偉大な預言者とその清らかな一門、教友たちに神の平安が降り注がんことを。 ハッジ・メッカ巡礼の季節が、慈悲と恩恵と共に訪れ、この光り輝く場所を訪れる栄光に輝いた人々に、再び、神の恩恵が下されることになった。この儀式は、あなた方メッカ巡礼者の一人一人を、精神的、物質的な成長へと導くものである。ここは、イスラム教徒の男女が、心と言葉で、偉大なる神の善と救済への
最高指導者のメッカ巡礼者に寄せたメッセージ
慈悲深く、慈愛あまねき、神の御名において
世界の創造主である神に感謝する。確かで偉大な預言者とその清らかな一門、教友たちに神の平安が降り注がんことを。
ハッジ・メッカ巡礼の季節が、慈悲と恩恵と共に訪れ、この光り輝く場所を訪れる栄光に輝いた人々に、再び、神の恩恵が下されることになった。この儀式は、あなた方メッカ巡礼者の一人一人を、精神的、物質的な成長へと導くものである。ここは、イスラム教徒の男女が、心と言葉で、偉大なる神の善と救済への導きに応える場所である。ここは、誰もが、兄弟愛、一体化、敬虔さを訓練する機会を得る場所である。ここは、教育のキャンプである。イスラム共同体の多様性、偉大さ、統一を示す場所である。悪魔と圧制との闘争の場である。ここを、全知全能の神は、敬虔な人間が、自分たちの利益を見出すための場所に据えている。我々が、知性と見識の眼を見開くとき、この神の約束が、我々の個人と社会の生活全般を包み込むのだ。ハッジの儀式の特徴は、現世と来世、個人と社会の融合にある。飾り気がないながらも壮麗なカアバ神殿、人々の肉体と精神による永遠の確かな中心の周回、一つの起点と終点の間の秩序立った継続的な努力と早足や疾走、アラファートとマシュアルの復活の場所への集団による移動、そしてこの壮麗な場所で人々の心に瑞々しさと清々しさを与える状態、集団による悪魔の象徴との対峙、さらには、あらゆる場所から、あらゆる人種や民族に属する人たちが一体となり、導きのしるしや多くの意味を含んだこの儀式の全てに参加すること・・・、これらが、この非常に多くの意義を持つ宗教義務の特色である。
このような儀式こそが、人々の心を神の記憶と結びつけ、その心を、信仰と敬虔さの光で照らすと同時に、人間を自己という柵から解き放ち、イスラム共同体の多様な集団の中に溶け込ませるものである。また、人間を罪という毒矢から守る敬虔さの衣をまとわせ、その人の中の、悪魔や圧制者に対して立ち上がる精神を奮い立たせる。ここで、巡礼者は、イスラム共同体の幅広い裾野のしるしを目にし、その可能性と能力を悟ると共に、未来への希望を抱く。また、その中で役割を果たすための覚悟を感じると共に、もし神の助けと恩恵を見出したなら、偉大なる預言者ムハンマドに再び忠誠を誓い、愛するイスラムと確かな契りを交わす。そして、自らと共同体を改革し、イスラムの言葉を掲げるために、自らの中に強固な決意を生み出すのだ。
この2つ、すなわち、自己の改革と共同体の改革は、どちらも、休むことのできない宗教義務である。そのためのアプローチは、賢明に行動し、熟慮する者にとって、洞察力と知性を働かせ、宗教的な義務について深く考えれば、決して困難なことではない。
自己の改革は、本能的な欲望と闘い、罪を避けようと努めることによって始まる。そして共同体の改革は、敵と敵の陰謀を知り、その敵対や打撃、攻撃を退けるために闘争すること、そしてイスラム諸国の国民、イスラム教徒の心、行動、言葉を統一させ、結びつけることによって整えられる。
現在の局面において、イスラム共同体の運命を左右する、イスラム世界の最も重要な問題の一つは、中東や北アフリカの革命運動である。それはこれまで、シオニストと共謀し、アメリカに従う堕落した複数の政権の崩壊につながっており、同様の他の政権の基盤をも揺るがしてきた。もしイスラム教徒が、この大きな機会を逃し、それをイスラム共同体の改革のために活かさなければ、大きな損失を被ったことになる。現在、干渉的で侵略的な覇権主義者は、全力を尽くし、このイスラムの壮大な運動を逸脱させようとしている。
これらの大きな蜂起の中で、イスラム教徒の男女は、各国の国民を辱め、シオニストの犯罪政権と同盟を組んできた自国の支配者による独裁とアメリカの支配に対して立ち上がった。この生死を決める闘争の中で、自らを救い出す要素を、イスラムと、その救いをもたらすスローガンや教えの中に見出し、それを声高らかに訴えた。パレスチナの虐げられた人々を擁護し、(シオニストの)強奪政権に立ち向かうことを、自らの要求のトップに掲げた。イスラム教徒の国民に対して友好の手を差し伸べ、イスラム共同体の連帯を求めたのだ。
これらは、この2年間に各国で起こった人々の蜂起の基盤である。彼らは自由と改革の旗を掲げ、肉体と魂をかけて革命の舞台に臨んだ。そしてこれらの事柄は、イスラムの壮大な共同体を改革するための基盤を確かなものにすることができるだろう。この基本原則をしっかりと守ること、それは、これらの国の民衆蜂起が最終的に勝利を収めるために必要な条件である。
敵は、このような基盤を揺るがそうとしている。アメリカ、NATO北大西洋条約機構、そしてシオニストの要員たちは、一部の浅はかな考えや愚かさを利用し、イスラム教徒の若者たちの勢いのある力強い運動を逸脱させ、イスラムの名のもとに、彼らを互いに対立させ、反シオニズム、反植民地主義のジハード・神の道における戦いを、イスラム世界の街頭や路地における盲目的なテロに変えようとしている。それにより、イスラム教徒の血が互いの手で流され、イスラムの敵が行き詰まりから解放され、イスラムとその戦士たちが悪いイメージを抱かれるようにしているのだ。
彼らは、イスラムとイスラムのスローガンを排除することを諦めた後、今、イスラムの各宗派の間に争いを起こし、シーア派恐怖症、スンニー派恐怖症といった陰謀によって、イスラム共同体の連帯を妨害しようとしている。
彼らは地域の自らの要員の助けを借りることで、シリアに危機を作り出し、各国の国民の注目を、自国の重要な問題や彼らを狙う危険から逸らせ、自分たちが意図的に作り出した流血事件に集中させようとしている。シリア国内の紛争、イスラム教徒の若者の殺し合いは、アメリカとシオニスト、そして彼らに追従する政府によって開始された犯罪であり、その炎がまた、彼らによって煽られている。エジプトやチュニジア、リビアの独裁者を支持いていた政府が、今は、シリア国民の民主主義追求の支援者になっている、などと誰が信じられようか? シリアの出来事は、30年間、単独で強奪者シオニストに抵抗し、パレスチナとレバノンの抵抗グループを支援してきた政府への仕返し、報復である。
我々は、シリア国民を支持し、この国への外国のあらゆる干渉や挑発に反対している。この国でのあらゆる改革は、シリアの国民自身によって、完全に国民的な方法で実施されなければならない。世界の覇権主義者たちが、完全に従属的な地域の政府の支援を受け、様々な理由によって、ある国に危機を作り出し、その上で、その危機の存在を口実に、自らに、その国であらゆる犯罪を行う許可を与える、これは深刻な危険であり、もし地域諸国がその問題に取り組まなければ、次は自分たちが、この覇権主義の陰謀に巻き込まれることを知るべきである。
兄弟姉妹諸君よ!ハッジ・メッカ巡礼は、イスラム世界の重要な出来事や問題について深く考える機会である。地域の革命の運命、そして傷ついた大国が、これらの革命を逸脱させるために行う努力も、そうした出来事や問題に含まれる。イスラム教徒の間に対立を生じさせ、立ち上がった国々の間にイランに対する悪感情を抱かせるための裏切りの陰謀、パレスチナ問題、パレスチナのジハード・神の道における戦いを沈静化させ、戦士たちを孤立させるための努力、西側政府のイスラム排斥のプロパガンダと、イスラムの偉大なる預言者の神聖を冒涜する人々への彼らの支援、イスラム教徒の一部の国々を分割させたり、内戦を生じさせるための土台作り、革命的な国民や政府に、西側の覇権主義者への対抗を恐れさせること、そして彼らの将来は、そのような侵略者に屈することにかかっているという誤った考え方を広めること、その他、この種の別の重要な問題が、メッカ巡礼の機会の中で、あなた方メッカ巡礼者の連帯と結束により、熟考されるべき重要な事柄に含まれるのだ。
疑いなく、神の導きと援助が、努力する敬虔な人間に、健全で確かな道を示してくれることだろう。
「我々の道において努力する者たち、我々は確かに、彼らを自らの道へと導くだろう。(コーラン第29章アン・キャブート章蜘蛛、第69節)」
神の慈悲と平安が降り注がんことを。
セイエド・アリー・ハーメネイー
西暦2012年10月21日
イラン暦1391年メフル月30日
イスラム暦1433年ゼルハッジャ月5日